行動経済学を知って、時間を節約しよう

お金の価値判断にまつわる場面で直観的な判断を働かせた結果、かえって損失を招くことがあることを、[行動経済学を知って、お金を節約しよう]で紹介しました。

選択を求められる場面でも、直観が邪魔してきて判断に迷うことがありますが、直観を切り捨てて判断した方が、かえって時間を有効活用できることもあります。

本ブログ記事では、そのような場面で直感の働きを整理し、それを抑制するための考え方を紹介したいと思います。

予算や計画の行動経済学

人間の直観は、平均値を求めることは得意だが、合計を見積もるのは苦手だそうです。

予算や計画は合計を見積もるの作業なので、直観に頼るとあまり良い結果にならず、過小評価してしまって、後で苦労することになりかねません。

以下では、行動経済学で知られている現象を説明し、対策を提案したいと思います。

メンタルアカウンティングを意識しすぎて、お金の使途に縛られがち

毎月の収入に対する日々の支出をコントロールするときに、食費はいくらまで、娯楽費はいくらまで、などと頭の中や小分けの袋を使って費目ごとの上限値を決めることも多いと思います。

これは、全ての支出を合計して収入と比較するよりも、個別の目標額を立てて、個別に達成する方が認知しやすく簡単だからと思います。この、費目ごとの予算を決めて管理しようとすることをメンタルアカウンティングと呼びます。

とはいえ、個別の予算達成に囚われすぎると、かえって機会を逸することもありますので、個別の予算と全体の予算を組み替える柔軟性があると良いでしょう。

例えば、月々の書籍費を3,000円と決めた場合、1,500円の本なら2冊まで買えるわけですが、3冊目を読みたいと思っても、メンタルアカウンティングによる予算達成の呪縛から、購入をためらってしまうかもしれません。一方で、外食費は月に20,000円のときで、半分も使ってない場合など、他で余裕があることもあるかもしれません。このような時はどう考えますか?

やはり、書籍費3,000円にとらわれて、3冊目の購入はためらうでしょうか?

実際は全体的に予算達成できれば支出が収入を上回らないので、合計値で判断すればよく、その方が選択肢を狭めすぎないで良いと思います。

このようなときは、書籍費と外食費を合計した額で予算達成を目指すなどの柔軟さをとっても良いと思います。

サンクコストに囚われて、損失を広げがち

既に払った費用で、取り戻すことのできないお金をサンクコスト(埋没費用)と呼びます。

会社のプロジェクトなどで、開始してから半年経過してから、当初に思い描いた状況から変わってしまった場合や、昔購入した高価なスーツを、体型の変化で着られなくなった場合があるかと思います。

既に払ったコストは取り戻すことができない場合、間違いを確定させたくないとの直観から、続けることを選んでしまう行動を選んでしまうことがあります。

プロジェクトを続けるとさらに費用が発生して儲けが期待できなかったり、スーツを持っておくだけで家のスペースが減って家に物が溢れたりする場合でも、人間の直観は損失を特に嫌う傾向があり、投資をやめたり、スーツを捨てることで損失を確定させたくないと直観してしまうことが理由なのだそうです。

続けるかどうかは、一度、支払い済みの費用(サンクコスト)は忘れて、今後にかかる費用と効果から判断すれば良いそうです。サンクコストに囚われて損失を確定したくない心理が直観に作用することをサンクコストの呪縛ともいいます。

計画の錯誤により、予算計画は楽観しがち

レポート提出の期限があって、期間が設けられた仕事をする場合、人間の脳は楽観的に計画を立ててしまう傾向があるようです。人は他人からよく見られたいと、自信過剰に振る舞ってしまったり、上手くいかなかった経験を無視しがちなのだそうです。

その結果、レポートの提出期限が来ても終了せず、期限を延ばしてもらった。もしくは、提出前日にハイパフォーマンスを発揮せざるを得なかった。という経験はお持ちではないでしょうか?

このような事態を避けるためには、過去の失敗事例を思い出す。期限前にスモールゴールを設定して、個別に達成して少しづつ進めていく。など、楽観に基づく後回しを避けると良いようです。

確率の認識の行動経済学

めったに起きないことに対して余計なコストを払ったり、ランダムな事象の傾向を捉え損ねてしまったり、人間の脳が確率を扱う時の特徴を知って、実際の確率とかけ離れた認識をして、過度な対応をするような時間の無駄を節約する方法を紹介したいと思います。

人間の脳は確率を誤って捉えがちなので、よくよく発生確率の計算や母数にの確認に注意すると良いでしょう。

利用可能性ヒューリスティックにより、悲惨な事故が起こりやすいと思いがち

人は、思い出しやすいことを、よく起きると思い込んでしまいます。そのため、例えば、テロなどの悲惨なニュースをよく見ていると、交通事故の死者よりもテロによる死者の方が多い、もしくはそれに匹敵するほど多いとと思い違いをしてしまうこともあり得ます。実際は交通事故の死者の方がずっと多いです。

人は確率について聞かれたときに、実際の確率に思いを馳せることはせずに、単純に思い出しやすさ(利用可能性)を確率が高いとものと直観的に判断してしまうことに原因があります。逆に、思い出しにくいことは確率が低いと考えがちです。

これにより気をつけて欲しいことは、地震などの災害や、ガンなどの病気のニュースを頻繁に見ていると、地震やガンの発生確率が高いと感じてしまい、より高額な保険に入ってしまうなど、実際の確率よりもかけ離れて高い費用を払ってしまいかねない。という行動に繋がりかねないということです。

このような直観力による誤った確率認識を正すためには、実際の事例や発生頻度や被害度合いなどの統計情報に思いを馳せることがおすすめです。こらにより、直観力に頼らずに熟考により、費用を抑えられるかもしれません。

保険会社各社は、この事実を知って知らずか、CMなどで実際にがん保険を利用した有名人を起用して、テレビを見ている人にがんのリスクを思い出しやすくしようと努力してるのかもしれません。

連言錯誤により、条件を絞り込む方が確率が高いと思いがち

質問です。秋葉原に居そうなのはどっち?

  1. サラリーマン
  2. サラリーマンでアニメ好き

秋葉原で1人を声かけた場合、どちらの確率が高いか?と言われて、「サラリーマンでアニメ好き」と答えた場合、連言錯誤に陥っていると言えます。直観的には「サラリーマンでアニメ好き」なんだけど、よく考えると「サラリーマン」と答えた場合も、連言錯誤に影響されていると言えるでしょう。

質問に対する正しい答えは「サラリーマン」です。「サラリーマン」にはアニメ好きとアニメ好きではない人を含みますので、「サラリーマンでアニメ好き」の方が人数が少ないため、確率も低いからです。

この様に、状況(秋葉原)に良く合っている条件(アニメ好き)が具体的にイメージできると、より具体的な方(サラリーマンでアニメ好き)の方をより強く起きやすいと誤って直観してしまう。これが連言錯誤です。

このような認知誤りを防ぐためには、印象よりも人数をイメージすると良いでしょう。

平均回帰を知らないと、ラッキーが続くと思いがち

ダーツの得点、ゴルフのスコアなど、毎回同じという正確な腕前の持ち主はいないと思います。普通は1回毎に良かったり悪かったり普通だったりします。

とても良い時があれば次には普通に近づき、凄く悪い時があれば、次には普通に近づくことでしょう。これは、良かった時には油断して、悪かった時には注意深くなるというよりは、ランダムな事象は良すぎや悪すぎてなどの極端な時があれば、次は大体普通になるという平均回帰の現象を見ているだけです。

例えば、体重も日によって1kgや2kgなどずれることもありますが、測定時の水分や食料がどれだけお腹に蓄えられているかによっても変わりますので、これもランダムな事象です。一喜一憂しないためには、平均的な体重を気にしておけば良いでしょう。

スポーツのスコアや身体的なことでランダムな事象については、平均回帰があるので、良すぎや悪すぎに一喜一憂して余計な対策をする必要はありません。スポーツであれば日々のトレーニングをしたり、体重維持であれば過度な飲食を控えて運動するなど、平均を望ましい状況に近づける努力をしていけば良いのではないでしょうか。

小集団を分析しても、大集団の傾向を知ることはできないどころか誤解を招く

小集団の統計結果は、大集団の統計結果に比べてばらつきが大きい。そのため、少ない標本数の統計結果やアンケート結果、信頼性が低いどころか、極端な結果になりうる。

例えば、2枚のコインを投げて2枚とも表が出たとき、裏が出ないコインと直観してしまうかもしれませんが、実際に4回に1回(25%)の確率で2枚とも表になります。一方で、10枚のコインを投げた時には全て表になる確率は0.1%と低く、99.9%の確率で裏も出ます。そのため、裏が出ないコインと直観的に感じることはほぼ無いでしょう。ただし、1000人に1人は全て表を出すかもしれませんが。

ランダムな事象は母数を大きくするほど極端な状況(コインが全て表)にはなりづらく、母数が小さいほど極端な状況になりやすいため、小集団の結果をみて、大集団の傾向を類推することは外れることがよくあります。

アンケート結果などを見せられた時には、母集団の大きさに着目し、少なすぎる集団の傾向が、そのまま一般的に起こるものと思わないのがおすすめです。

分母を無視して、起きやすさを判断しがち

人間の脳は数字上の確率よりも、鮮明にイメージできることの方を印象的に捉えやすいそうです。

例えば、「0.0%の確率で10万円もらえる。」よりも、「千人に1人が10万円をもらえる。」という方が、10万円を貰える可能性が高く感じるでしょうか?ど

ちらも同じ確率の事象を言葉を変えて表現してますが、「1人」とイメージできると、分母の千人が霞んでしまい、可能性がグッと高まって感じるようです。

このように、人間の脳は起き得る事象にばかり目が行きがちで、確率の元になる分母を忘れてしまいがちなのだそうです。

このような直観により、起こりやすさを実際より高く認識してしまわないようにするためには、確率を計算してみて数字で捉えることがおすすめです。

また、このような分母の無視を利用して判断を促す悪巧みもありえます。起き得る事象だけを伝えて、分母を伝えないことで、事象が起き易いと認知させる方法です。「いま、住宅価格が値上がりしてます!」など、地域や時期や件数など確率を計算するのに分母が不足している情報は、よく起きそうなことと直感的に感じてしまいがちですので気をつけましょう。

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