ふるさと納税、やってますか?
所得税と住民税を前払いの形で地方自治体に寄付すると、寄付額の3割ほどの返礼品をもらうことができます。ふるさと納税のポータルサイトには数えきれないほどの返礼品が並んでおり、欲しい返礼品を選ぶのは、あたかもインターネットショッピングをしている感覚になります。
ここで注意したいのは限度額です。限度額を超えた寄付は、ふるさと納税制度による前払いの形にはなりません。そのため、限度額を把握して限度額いっぱいまで制度を活用したいところです。
限度額はふるさと納税サイトでもシミュレーションすることができるので、おおよその金額を把握することは可能ですが、計算の仕組みを把握しておかないと不安という方もいるでしょう。
本ブログ記事では、限度額の計算の仕組みを紹介します。
ふるさと納税の仕組み
ふるさと納税といっても、実際には
- 地方自治体への寄付をする
- 寄付額の3割ほどの返礼品がもらえる
- 申請すると、寄付額から2,000円を引いた額だけ、所得税と住民税が減税される
という形になっています。以下で詳しく説明していきます。
寄付額の3割ほどの返礼品がもらえる
ふるさと納税のポータルサイトを眺めてみると、ネットショップのように返礼品が商品のごとく並んでいることがわかるかと思います。寄付金額に応じて、食品や雑貨、お酒や化粧品など地方の特産品を返礼品として受け取ることができます。
ひとつでも気に入った返礼品が見つかると、毎年同じ返礼品を目当てに同じ自治体へリピートで寄付してしまうほどです。
我が家は神奈川県開成町の返礼品のアスタリフトと、北海道小樽市の返礼品のルタオのチーズケーキがレギュラー入りを果たしました。
今年は滋賀県野洲市の返礼品のSK-IIと、鹿児島県志布志市の返礼品の角煮まんを楽しみにしています。
節税ではなく税金の前払い
冒頭に説明した通り、地方自治体への寄付額から2,000円を引いた額が、翌年になって、所得税と住民税から減額されます。
地方自治体への寄付が先で、減税が後なので、あたかも税金を前払いしているよう形に見えます。
ここで注意したいのは、減税は[寄付額-2,000円]なので、節税ではないことです。つまりお金は増えません。
さらに注意しておくことは、寄付しただけでは減税されません。翌年の確定申告で寄付を申告が必要です。これらに必要な寄付証明書が地方自治体から送られたら、大事に保管しておきましょう。
また、いくつかの条件を満たせば、確定申告の代わりにワンストップ申告で簡易的に申請を行うことも可能です。
いずれにせよ、申告を忘れる事態は避けねばなりません。
ふるさと納税の限度額
税金を前払いするだけで金額の3割ほどの返礼品をもらえることに魅力を感じで頂けたでしょうか?
そろそろ、本ブログ記事のメインテーマである限度額について触れたいと思います。
魅力的なふるさと納税制度ですが、無制限ではなく、制度の対象となる寄付額には限度があります。個人ごとの状況により限度額が異なりますので、個人の状況に応じて計算したり、ふるさと納税のポータルサイトでシミュレーションすることができます。
以下では、その計算原理を説明します。
住民税の課税所得を把握する
その年の最終的な課税所得をもとに、限度額は決まってきます。だいたい毎年の年収が変わらず、家族構成も変わらない場合は、去年の源泉徴収票を参考にするとよいでしょう。
源泉徴収票の前半は、以下の項目が記載されてます。
- 支払金額
- 会社から支払われた年収総額
- 給与所得控除後の金額
- 会社員のみなし経費を引いた後の所得
- 所得控除の額の合計額
- 社会保険料や基礎控除の合計額
- 源泉徴収税額
- いわゆる所得税
このうち、[②給与所得控除後の金額]から[③所得控除の額の合計額]を引いた金額が、所得税の課税所得となります。
住民税の課税所得はここには直接記載されてませんが、所得税と住民税の所得控除の額の差額を利用して、所得税の課税所得から導出できます。
- 基礎控除の差
- +5万円
- 配偶者控除の差
- +5万円(配偶者が専業主婦/主夫)
- 扶養控除(高校生)の差
- +5万円(1人につき)
- 扶養控除(大学生)の差
- +18万円(1人につき)
これらの合計額を所得税の課税所得に加算したものが住民税の課税所得になります。
源泉徴収票に頼らずに計算したい場合や、家族構成や年収の変化があって、去年の源泉徴収票が頼りにならない場合は、改めて住民税の課税所得の計算が必要となります。詳しくは本ブログ記事[年収から税金と社会保険料はどれだけ引かれるのか?]にて、課税所得の計算方法をご参照ください。
特例分は住民税の課税所得の2%
ふるさと納税の制度では、住民税の課税所得の2%までが、特例による減税の対象となっています。
厳密には、
- 住民税の課税所得の10%が、住民税の所得割分
- 住民税の所得割分の20%までが、ふるさと納税の特例による減税の上限額
と定められておりますので、これらを掛け合わせたものとして、住民税の課税所得の2%が、ふるさと納税の特例分の上限額ということになります。
基本分の寄付控除分も加算
ふるさと納税の減税分は特例分だけではありません。もともと寄付には基本分の減税がが存在しており、これが加算されます。
というのも、寄付金それ自体には、もともと課税所得を控除する効果がありますので、課税所得が減額されたことによる減税効果をさらに受けることができます。
(寄付金額-2,000円)の金額が課税所得から引かれますので、(寄付金額-2,000円)に住民税率10%を掛けた金額が住民税から減税されます。さらに、(寄付金額-2,000円)に所得税率(個人により5%, 10%, 20%など)と復興税率102.1%を掛けた金額が所得税から減税されます。
特例分と基本分を合算する
これらの特例分と基本分の合算額が寄付により減税される金額の上限となります。
特例分と基本分を合算した減税の限度額が、寄附金限度額から2,000円を引いた金額と一致しますので、以下の式が成り立ちます。
課税所得の2% + (寄付限度額-2,000円) × (住民税率10% + 所得税率 × 復興税率102.1%) = (寄付限度額-2,000円)
これを整理すると、以下の式になります。
寄付限度額= 課税所得の2% ÷ (100% – 住民税率10% – 所得税率×復興税率102.1%) + 2,000円
所得税率ごとに寄付限度額を計算すると以下の結果となります。
- 所得税率5%
- 2% ÷ 0.84895 = 2.356%
- 寄付限度額 = 課税所得 × 2.356% +2,000円
- 所得税率10%
- 2% ÷ 0.7979 = 2.506%
- 寄付限度額 = 課税所得 × 2.506%+2,000円
- 所得税率20%
- 2% ÷ 0.6958 = 2.874%
- 寄付限度額 = 課税所得 × 2.874%+2,000円
- 所得税率23%
- 2% ÷ 0.66517 = 3.007%
- 寄付限度額 = 課税所得 × 3.007%+2,000円
- 所得税率33%
- 2% ÷ 0.56307 = 3.552%
- 寄付限度額 = 課税所得 × 3.552%+2,000円
- 所得税率40%
- 2% ÷ 0.4916 = 4.068%
- 寄付限度額 = 課税所得 × 4.068%+2,000円
- 所得税率45%
- 2% ÷ 0.44055 = 4.540%
- 寄付限度額 = 課税所得 × 4.540%+2,000円
年収が上がると課税所得も所得税率も上がっていきますので、寄付限度額は年収が高いほどぐんぐん上がっていきますね。
ふるさと納税のやり方
ふるさと納税をやるには寄付と申請をする必要があります。まずは寄付のやり方について説明します。
ふるさと納税サイトを選ぼう
ふるさと納税のポータルサイトはCMでもさかんに紹介されていますので、基本的にはどこを選んでも良いでしょう。
ただし、ひとつのポータルサイトが全ての返礼品をカバーしている訳ではないので、各種ポータルサイトによって返礼品の内容が微妙に違うこともあります。お目当ての返礼品がある場合は、それを取り扱っているポータルサイトを探すところから始めると良いでしょう。
代表的なところは
あとは、これらを比較したサイトもあります。
ちなみに、女性の間で話題のSK-IIは、ふるさとチョイスと楽天ふるさと納税でしか扱ってませんでした。(2022年4月時点)
PayPayポイントがもらえる「さとふる」がお勧め
特に目当ての返礼品も無く、よりお得にふるさと納税と付き合いたければ「さとふる」がおすすめです。寄付金額に対してPayPayポイントがもらえますので、ふるさと納税で2重にお得です。普段は寄付額の1%ですが、3と8の付く日は6%にポイントアップしますので、普段はお目当ての返礼品を探しておいて、注文する日をポイントアップデーにぶつけることも可能です。
ふるさと納税の申請
こちらでは、寄付した後の申請について説明します。これを忘れると寄付額の減税がされませんので、十分に注意してください。
確定申告
不動産収入などがある方は、確定申告の時にふるさと納税分も一緒に申告してください。
また、医療費控除や住宅ローン減税などで確定申告の経験や知識がおありの方は、後で紹介するワンストップ特例よりも確定申告の方が簡単ということもあるかもしれません。
いずれの場合でも、寄付した後に地方自治体から送られてくる寄付証明書を、確定申告の際に添付資料として提出する必要がありますので、無くさないように保管しておいてください。
ワンストップ特例制度
以下の条件に当てはまる方は、確定申告ではなく、ワンストップ特例制度により寄付の申請をすることもできます。
- 元々、確定申告の予定がない
- 5つ以内の自治体への寄付である
この場合は、寄付の1回ごとに地方自治体から申請書を送ってもらい、その全てに対して申請書類を送付することが必要です。以下のような手順を想定しておいてください。
- ふるさと納税のポータルサイトにて、ワンストップ特例制度の利用の意思表示(寄附の際にチェックなど)
- 地方自治体から申請書が送られる
- 申請書に必要事項を記入して送付