老後の家賃収入を目標にワンルームマンション 投資を始めたものの、「いま売却すると儲けが出るのでは?」と思うこともあるでしょうか。その際に「どのタイミングで売るのがベストか?」という問いに頭を悩ませるかもしれません。
あるいは、「今持ってる物件よりも、他の物件に買い替えたら、デッドクロスを回避してより節税になるかも」などのアイデアが頭をよぎるかもしれません。
実のところ、ワンルームマンションで家賃収入を得て、資産拡大したいのでしたら、基本的には売却をせず、持ち続けるのが有効だと、私は思います。
それでも売却したい場合のため、売却タイミングを見極めるためのポイントを整理したいと思います。
投資マンションの売却は短期譲渡より長期譲渡
不動産を安く買って高く売ることで売却益を得ることができます。ただし、バブル期のような転売行為が横行するのを防ぐため、短期間での売却には高い税金が課せらるようになりました。
短期譲渡の税率は39%
不動産を取得してから5年以下で売却すると、短期譲渡という扱いになります。この5年を判断する基準が1月1日のため、5年経過は取得から6回目の正月を迎える必要があることになります。不動産を取得した日付から5年後が5年経過ではないことに注意してください。
そして、短期譲渡で不動産売却益が出ると、利益に対して39%の税金がかかります。
長期譲渡の税率は20%
一方で、不動産取得から6回目の正月を超えてからの売却は長期譲渡となります。利益に対する税金は20%となりますので、短期譲渡に対して約半分の税負担となります。
売却時の利益が500万円だった場合、短期譲渡だと税金は180万円。長期譲渡だと税金は100万円となります。この場合、長期譲渡となるタイミングまで売却を待てば、80万円の節税ができるのです。
投資マンションの売却のタイミング
投資マンションの売却にあたっては、売却時に残債が減っているほど手残りの金額が大きくなります。その観点でも、ローンの残債を十分に減らすため、保有期間が長くなってから売却する方が有利ということになります。
残債を減らさないとうまみがない
物件を購入したとき、銀行から融資を受けて購入していることでしょうから、その物件を売却するときに、売却金額からローンの残債を一括で返済する必要があります。
売却額とローンの残債が同じだと、手残りの金額はプラスマイナスゼロになります。ということは、ローンの残債が少ないほど、手残りの金額が増えていくことになります。
ローンの残債を減らすのには時間がかかりますので、購入してすぐに売却するのではなく、しばらくローンを返済し続けてから売却する方が、手残りがより多くなり、売却によるうまみがあることになります。
購入から10年以上が目安
物件購入当初は、物件価格にプラスして手数料なども支払いますので、購入直後に購入価格で売却するのは確実に赤字となります。その後、徐々にローンの残債を減らしていき、売却時に黒字に転じることになります。その期間は、購入からだいたい10年ほど経過してからとなるでしょう。
そこからさらに年数が経つと、残債はさらに減りますので、売却時の手残りはさらに増えていくことになります。
投資マンションの売却の税金は減価償却がカギ
不動産売却時の税金算出のもととなる売却益は、単に購入価格と売却価格の差ではありません。売買手数料を利益から減算したり、減価償却費を利益に加算することになります。算出にあたって詳しくは、当ブログ記事[投資マンション売却時のキャッシュフローの利益と税務上の利益]もご参照ください。
帳簿上の利益に税金が掛かる
税金は帳簿上の利益に対して税率を掛けたものとなりますが、具体的には、
- (売却時の物件価格)から、
- (帳簿上の物件価格) = (購入時の物件価格 – 減価償却費)と、
- (売却時の売買手数料)を引いたもの
が、帳簿上の利益となります。
減価償却を使って利益を計算
減価償却費は、購入時から売却までに、物件の建物や設備に対して経年劣化した分に相当する金額です。購入時の価格が2,000万円でも、売却時までの減価償却費が500万円とすると、1,500万円が売却時の税務上の物件価値となります。
売却価格が2,000万円。売却時の手数料が100万円とすると、
2,000万円 – 1,500万円 – 100万円 = 400万円
となり、400万円が税務上の売却益となります。
減価償却による保有時の節税は売却時に相殺
この通り、減価償却費は売却時の帳簿上の利益の計算に関わってきます。減価償却費が多いほど、帳簿上の物件価格が低くなります。それにより、帳簿上の利益は高くなり、税金も高くなってしまいます。
一方で、減価償却費は、物件保有時における毎年の確定申告で不動産所得を減らす効果があるため、税金を下げる効果(節税効果)があることが知られています。
この通り、保有時の減価償却費は節税効果があるものの、売却時はそれがそっくりそのまま、売却時の利益を増やすこととなり、増税の効果が働いてしまいます。
投資マンションの売却詐欺に注意
ここ数年、私の手元に不動産売却を勧誘する手紙が届くことがあります。それも同じ会社から定期的にです。お世話になっている不動産屋に見てもらったところ、高値で買取、転売している業者とのことでした。
適正な価格で購入していただける相手ならば売却先の選択肢として差し支えありませんが、中には詐欺行為と呼べる方法で物件の売却を迫る悪徳業者もいることに注意しましょう。
値下がりしてますよに注意
「いま、あなたの物件は値下がりしてます。」と不安を煽る電話を受けても、まずは電話を切って落ち着きましょう。
不安になって鵜呑みにしてしまうのは、ちょうどオレオレ詐欺で信じてしまうパターンと同じようなものです。
一度落ち着いてから、不動産買取査定のインターネットサービスに申し込むか、信頼のおける業者に相場価格を確認しましょう。
実は値下がりしてないことが分かって安心できるものと思います。
買い叩かれて損するパターン
値下がりの不安を煽る電話の後には、「いまなら特別に、この価格で買取ができます。」などと、実際の相場よりも随分と安い価格を提示されたら怪しいと思うと良いでしょう。あなたの物件を騙して取得したいということでしょうから、不安になって藁をもすがる気持ちを抑えて、一度落ち着きましょう。
このような不動産買取詐欺の被害に遭わないためには、普段から相場を把握しておくことが対策となります。
投資マンションは売却しないのがお勧め
売買すると仲介業者が儲かる
そもそもですが、不動産の売買には資格を持った業者が仲介するのが基本であり、仲介手数料は物件価格の3%+消費税が上限となります。おおむね、仲介手数料の値下げが無ければ、上限価格を請求されるものと考えておいてそれほどズレてはいないものと思います。
そのため、売買という行為が行われるだけで、物件価格の多少の上下はあるにしても、仲介業者は物件価格の3%を確実に儲けられる仕組みとなっています。
売買で資産が1割目減する
例えば、2,000万円の価値のある物件を売却すると、仲介手数料は物件価格の3%+消費税で66万円となります。ローンの繰上返済の手数料もかかるでしょう。
別の2,000万円の物件を買い直すと仲介手数料はさらに66万円。さらに銀行のローン手数料や登記変更の手数料もかかります。
これらのことをやっているうちに、出費がかさんでいき、物件価格の1割にあたる200万円程度まで積み上がっていくものと思います。
このように、物件を買い替えると物件価格の1割に当たる資産が目減りしてしまうことは容易に想像ができることでしょう。そう言った理由で、私は安易な買い替えはするべきではないと思っています。
とはいえ、そこまでの負担をしてまで買い替えをしたい理由があれば、その限りではありません。
まとめ
資産を増やし続けたいのであれば、安易な売却はお勧めしません。ただし、まとまった現金を手にする必要があるときなどは、その限りではありません。その際は、長期譲渡で、かつローン残債を十分に減らした物件から売却することをお勧めします。