不動産投資の節税は売却時の税金で相殺される件

節税は減価償却を経費として利益を相殺できる税務上の制度を利用したものでしたが、減価償却で節税できた分だけ、売却時の税金として跳ね返ってくるという話をしたいと思います。

さらに、節税のポイントとなる減価償却費の上手な扱い方についても整理したいと思います。

その前に不動産投資の節税が分からないという場合は、[不動産投資による節税の仕組み]を参照いただければと思います。

節税は、建物と設備の減価償却を利用している

節税というのは、毎年のキャッシュフローの収支ををプラスにしながらも、税務上の収支をマイナスにして、確定申告で所得税の還付を受けられるというものでした。

これは、確定申告の際に税務上の収支を計算するときに、建物と設備の減価償却費を経費として支出扱いにできるという制度を利用したものです。

これにより、不動産投資を始めた頃は確かに節税の恩恵を受けることができます。

節税は売却時の利益の先取り

不動産を最終的に売却するところまでを不動産投資の出口と考えると、減価償却による節税は、売却時の利益の先取りであることが知られています。

毎年の確定申告において、1年間の建物と設備の減価償却費は賃貸経営の経費とすることができるため、賃貸家賃の収入を目減りさせて、利益を圧縮して税金を減らすことができます。

例えば、2,000万円のワンルームマンションを購入した時に、減価償却がゼロだとすると、税務上の収支はプラス40万円となります。

家賃収入(年間収入) +100万円
管理手数料、管理費、固定資産税(年間経費) ー30万円
銀行への利息支払い(年間経費) ー30万円
減価償却費(年間経費) 0万円
税務上の収支(年間収入年間経費 +40万円

年収700万円程度のサラリーマンだと給与所得に対する追加の利益40万円に対して、約20%にあたる8万円の納税の義務が発生します。

上記の計算に減価償却費50万円を経費として算入すると、税務上の収支はマイナス10万円となります。

家賃収入(年間収入) +100万円
管理手数料、管理費、固定資産税(年間経費) ー30万円
銀行への利息支払い(年間経費) ー30万円
減価償却費(年間経費) ー50万円
税務上の収支(年間収入年間経費 ー10万円

年収700万円程度のサラリーマンの場合は損失10万円に所得税率20%を掛けた2万円ほどが還付されるでしょう。

減価償却の効果としては8万円の納税が2万円の還付に変わるため、10万円の節税効果があります。これは、減価償却費50万円に所得税率20%を掛けた10万円と等しい金額であることは必然の一致です。

これを10年続けると100万円の節税効果となります。

売却時の税務上の利益の考え方

前述の経営を10年ほど続けると減価償却は合計で500万円となります。このとき、税務上の物件価値は2,000-500=1,500万円となります。

この物件を購入時と同じ2,000万円で売却できた場合、税務上は1,500万円のものが2,000万円で売れたことになり、税務上の利益は500万円となります。

5年以内の売却の場合は短期譲渡所得として利益に対して約40%の税金がかかりますが、5年超での売却は長期譲渡所得として利益の約20%の税金がかかります。

税務上は500万円の利益となり、100万円の税金を納める必要があります。

これは、減価償却により10年間で節税効果を受けた額と同額となります。

税務上の利益を通算すると減価償却費が消える

減価償却50万円に対する20%の節税を10年間に渡って恩恵を受けた結果が100万円の節税効果でした。

10年間の減価償却500万円という金額そのものは、売却時の税務上の収益そのものということになります。

税務上の利益500万円に対して20%の課税がされますので、節税効果と売却時の納税が同額になるのは必然的ということになりますが、納得できますでしょうか?

まとめると、売却時に納税する金額は、減価償却費を利用することで、節税効果の形で現在に先取りしていることになっており、タイムマシンのように未来の利益を現在に先取りしているといえます。

減価償却との上手な付き合い方

上述の例では、年収700万円のサラリーマンの所得税率が20%と、売却時の税率が20%が同じために成立することでした。

所得税率と譲渡税率の違いを知る

別の例で、年収が500万円のサラリーマンで所得税率が10%の場合は減価償却の節税効果が薄れます。

減価償却50万円に対する節税効果は50万円の10%で5万円で、10年では50万円の節税効果があります。これは売却時の税金100万円より50万円も損してしまいます。

一方で、年収が1,000万円のサラリーマンで所得税率が23%の場合は少し事情が変わります。

減価償却50万円に対する節税効果は50万円の23%で11.5万円で、10年では115万円の節税効果があります。これは売却時の税金100万円より15万円お得ですね。

このように、所得税率が高いほど、減価償却の節税効果が高いことが分かります。

結局は利益の先取りが得

所得税率が売却時と同じ20%の場合、本当に同じことなのでしょうか?

10年後に100万円をもらうより、10万円を10年連続でもらう方が、10万円ずつ毎年再投資して複利効果で利益を得られる投資に回すことができるので、先取りしておくことのメリットがあります。

利益の先取りで気をつけたいこと

結局のところ、減価償却費は、設備部分の計算を定額法にするか、定率法にするかで、コントロールすることはできますが、毎年の経費としては確実に存在するものです。

そのため、毎年、減価償却による売却時の利益の一部を先取りをしていることに気をつけましょう。

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