毎年送られてくるねんきん定期便をみると、もらえる年金の見込みが書いてありますが、見込み金額は全額が手取りになるわけではありません。
年収や住む地域によって異なりますが、おおよそ10%前後が引かれた残り(90%前後)が手取りになります。
[驚きの事実!? 年金から「社会保険料」はいくら引かれるかご存知ですか?](RENOSYマガジン)このブログ記事を読むと、支給額と手取りの差である社会保険料と税金の金額を把握できるようになります。
尚、75歳以上については後期高齢者医療保険に加入することになりますが、ここで紹介する国民健康保険とは別の仕組みなので、当ブログ記事[75歳以上の年金から社会保険料と税金を引いた手取りを計算する方法]を参照頂ければと思います。
年金から引かれる社会保険料の計算
会社員の社会保険料
会社員が支払う社会保険料は、各種の合計で収入に対して約15%程度です。
その内訳は以下の通りです。
- 厚生年金 = 収入 × 18.3% ÷ 2
- 医療保険 = 収入 × 10% ÷ 2
- 介護保険 = 収入 × 1.5% ÷ 2
- 雇用保険 = 収入 ×0.9% ÷ 3
- 労災保険 = 0円 (会社負担)
詳しくは[年収から税金と社会保険料はどれだけ引かれるのか?]にて把握いただけると思います。
リタイア後の社会保険
60歳以降に退職すると、社会保険料のうち以下の保険料は支払う必要が無くなります。
- 厚生年金
- 雇用保険
- 労災保険
ただし、国民皆保険制度により国民全員が何らかの公的健康保険に加入する必要があり、60歳以降も例外ではありません。そのため、以下の社会保険料は60歳以降も支払う必要があります。
- 健康保険
- 介護保険
会社を退職すると同時に健保組合の資格を喪失しますので、代わりに自営業者と同じ国民健康保険に加入する必要があります。
尚、国民健康保険の保険料については、全国一律に同額ではありませんので、自治体ごとに計算式を確認する必要があります。
所得比例分と定額分の平均的な数字を適用すると、一人当たりの年間の保険料は、おおよそ以下のように概算することができます。自治体ごとの差がすなわち社会保険料の差(数万円)となります。
世帯あたりに定額の保険料を上乗せする自治体もありますが、ここでは割愛します。
国民健康保険は2つのパートに分かれています。
- 基礎(医療)分 = 所得の約7% + 4万円前後
- 後期高齢者の支援金分 = 所得の約2.5% + 1.5万円前後
また、介護保険料は65歳を境界に計算方法が異なります。
- 40歳~64歳まで:介護保険料 = 所得の約2% + 1.5万円前後
- 65歳以上:介護保険料 = 基準額(7万円前後) × 年金支給額ごとの倍率(0.3倍~4倍)
国民健康保険と介護保険の合計となる社会保険料は以下の通りです。
- 60歳~64歳:社会保険料 = 所得の約11.5% + 7万円前後
- 65歳~74歳:社会保険料 = 所得の8.5% + 5.5万円前後 + 7万円前後 × (0.3倍~4倍)
自治体ごとに計算できるサイト[国民健康保険料シミュレーション]でお住まいの自治体の保険料を計算することができます。
60歳~64歳の社会保険料
年金支給が200万円の場合の所得は以下のようになります。
200万円 - 77万円(年金控除) - 43万円(基礎控除) = 80万円(年金支給の約40%)
国民健康保険料は、この80万円(40%)部分に対してかかりますので、年金支給額の約8%が社会保険料となります。
65歳~74歳の社会保険料
年金支給が200万円の場合の所得は以下のようになります。
200万円 - 110万円(年金控除) - 43万円(基礎控除) = 47万円(年金支給の約24%)
国民健康保険料は、この47万円(24%)部分に対してかかりますので、年金支給額の8%が社会保険料となります。
75歳以上は国民健康保険ではなく、後期高齢者医療保険に加入することになりますので、ここでは割愛します。
所得の計算方法
保険料の計算において必要なのは所得の金額となります。支給された年金から年金生活者としての経費を引いた額が、保険料計算における所得となります。
社会保険料の計算における所得は以下の計算となります。
このうち(年金支給額 - 年金控除)の計算方法は以下のようになります。
年金支給額 | 計算式 | 金額 |
~60万円 | – | 0万円 |
60万円~130万円 | (支給額が60万円を超えた分) × 100% | 0万円~70万円 |
130万円~410万円 | 70万円 + (支給額が130万円超えた分) × 75% | 70万円~280万円 |
ちなみに、65歳以上の場合の(年金支給額 - 年金控除)の計算は少し異なり、年金支給額が330万円までの金額が若干少ない形となります。つまり、330万円を超えると、65歳未満も65歳以上も(年金支給額 - 年金控除)の金額は同じとなります。
年金支給額 | 計算式 | 所得 |
~110万円 | – | 0万円 |
110万円~330万円 | (支給額が110万円を超えた分) × 100% | 0万円~220万円 |
330万円~410万円 | 220万円 + (支給額が330万円超えた分) × 75% | 220万円~280万円 |
年金から引かれる税金の計算
年金生活においては、社会保険料が主な納付であって、会社員として働いていたときとは異なり、所得税と住民税はほとんど掛からない場合が多いです。
所得税
所得税の計算における所得は、社会保険料計算の所得とはまた異なります。
- 所得税 = 所得 × 約5% (所得が195万円までのとき)
- 所得 = (年金支給額 - 年金控除) - 基礎控除(48万円) - 配偶者控除(38万円) - 社会保険料
(年金支給額 - 年金控除)は、社会保険料の計算と同じです。
先ほどの年金支給額200万円の場合、以下の計算となります。
- 60歳~64歳:
- 所得 = (200万円 - 77万円) - 48万円 - 38万円 - 16万円 = 21万円
- 所得税 = 21万円 × 約5% = 約1万円
- 65歳~74歳:
- 所得 = (200万円 - 110万円) - 48万円 - 38万円 - 9.5万円 = 0万円 (マイナスは0と扱う)
- 所得税 = 0万円 × 約5% = 0万円
住民税
住民税の計算における所得は、社会保険料計算の所得とはまた異なります。住んでいる地域によって、年間1,000円程度の差はありますが、気にするほどでもありません。
- 住民税 = 所得 × 約10% + 約5,000円
- 所得 = (年金支給額 - 年金控除) - 基礎控除(43万円) - 配偶者控除(33万円) - 社会保険料
(年金支給額 - 年金控除)は、社会保険料の計算と同じです。
先ほどの年金支給額200万円の場合、以下の計算となります。
- 60歳~64歳:
- 所得 = (200万円 - 77万円) - 43万円 - 33万円 - 16万円 = 31万円
- 住民税 = 31万円 × 約10% + 約5,000円 = 約3.6万円
- 65歳~74歳:
- 所得 = (200万円 - 110万円) - 43万円 - 33万円 - 16.5万円 = 0万円 (マイナスは0と扱う)
- 住民税 = 0万円 × 約10% + 約5,000円 = 約5,000円
年金から税金と社会保険料を引いた手取りは約90%
社会保険料と税金の計算においては、所得を計算したうえで、所得比例部分と、定額部分を合計したものとなります。
今回計算に用いた年金支給額200万円の例では、以下の額だけ年金から引かれます。
- 60歳~64歳
- 社会保険料(16.2万円) + 所得税(1万円) + 住民税(3.6万円)
- 合計:約21万円(年金支給額の約10%)
- 手取り:179万円(約90%)
- 65歳~74歳
- 社会保険料(16.5万円) + 所得税(0円) + 住民税(約5,000円)
- 合計:17万円(年金支給額の約9%)
- 手取り:約183万円(約91%)