住民税は所得に応じて10%かかる部分と、定額で5,000円程度(2024年から4,000円程度)からなる部分の合計です。
ここでは、住民税の計算の仕方を説明して、住民税には地域差がすごくあるという誤解の原因を解明したいと思います。
住民税は所得割(数十万円)と均等割(数千円)の合計
個人の住民税は、以下の合計となります。
- 所得割:所得に対して10%。年収が上がると高くなる。
- 均等割:定額で5,000円程度(2024年から4,000円程度)。住む場所によって若干違う。
年収から社会保険料や社会人としてのみなし経費を引いたものが個人の所得となりますが、以下のようになります。
年収400万円〜800万円の場合、ざっくりと年収の半分(50%)が住民税の課税所得と計算でき、課税所得の10%である所得割は5%程度と概算することができます。裏付けとして、年収ごとの計算結果をまとめてみました。年収が上がるほど住民税も高くなります。
年収 | 住民税課税所得 | 住民税(所得割) | 年収に対する割合 |
400万円 | 177万円 | 17.7万円 | 4.4% |
500万円 | 242万円 | 24.2万円 | 4.8% |
600万円 | 307万円 | 30.7万円 | 5.1% |
700万円 | 376万円 | 37.6万円 | 5.4% |
800万円 | 450万円 | 45.0万円 | 5.6% |
尚、神奈川県横浜市などは所得割の10%の部分が10.025%になることもあります。(年収800万円で、1,125円程度増えます)
一方、均等割の部分は住む場所によって違うものの、地域によって変動幅は1,200円程度です。
地域 | 区市町村民税 | 都道府県民税 | 合計(2021年) |
東京都台東区 | 3,500円 | 1,500円 | 5,000円 |
神奈川県横浜市 | 4,400円 | 1,800円 | 6,200円 |
神奈川県川崎市 | 3,500円 | 1,800円 | 5,300円 |
静岡県熱海市 | 3,500円 | 1,900円 | 5,400円 |
尚、2023年までは、区市町村民税と都道府県民税は、500円ずつ増税の状態ですので。2024年からは元に戻って、上記の区市町村民税と都道府県民税は500円ずつ(合計1,000円)下がる見込みです。
地域によって差があるといっても、年収800万円で独身者が住む場所によって住民税の違いは年間2千円程度となります。月当たりだと170円程度の差となってしまいます。
- 台東区:45.5万円(月当たり、約37,916円)
- 横浜市:45.7万円(月当たり、約38,083円)
住民税の主な差は年収差
こうしてみると、住民税の差は年収による差が支配的だと理解することができます。
所得割と均等割(5,000円)の合計は以下のように増えていきます(独身者の場合)。
- 年収400万円で、18.2万円
- 年収500万円で、24.7万円 (+6.5万円)
- 年収600万円で、31.2万円 (+6.5万円)
- 年収700万円で、38.1万円 (+6.9万円)
- 年収800万円で、45.5万円 (+7.4万円)
尚、扶養家族がいる場合は、サラリーマンとしての経費が増えるとみなし、課税所得が下がります(扶養控除といいます)。課税所得が減った分の10%分だけ、独身者を想定して算出した住民税を減らす効果があります。
扶養家族 | みなし経費(扶養控除) | 住民税減額幅 |
配偶者 | 33万円 | -3.3万円 |
高校生(16歳〜18歳) |
33万円 | -3.3万円 |
大学生(19歳〜22歳) | 45万円 | -4.5万円 |
23歳以上(自宅警備員、家事手伝い) | 33万円 | -3.3万円 |
収入に対して手取りがどのくらいになるのか?という包括的な計算については、[手取り給与の計算法則(2021年版)]も参照頂ければと思います。
住民税に地域差があると誤解するとき
住民税の金額の決まり方はここまでに説明した通り、年収に応じて課税されるという計算が支配的です。
サラリーマンは自分で住民税を計算することがないので、計算の仕組みを知らないのが普通だと思いますが、「住民税」という名前からくる印象により、住んでる地域に収める税金という解釈から、住んでる地域によって独自に課税されるものという印象があるのかもしれません。
そのような印象に基づくと、以下のような誤解を発生する場面があるものと思います。思い当たるふしはありますでしょうか?
年収差を地域差と誤解
- Aさん:横浜市に住んでます。住民税は月3.5万円 (年間42万円)
- Bさん:川崎市に住んでます。住民税は月2.5万円 (年間30万円)
この2人が住民税の金額を比較すると、横浜のほうが住民税1万円も高いね。という誤った解釈に陥りがちです。
実際は、差の内訳は以下のようになります。
- 横浜と川崎の定額部分(均等割)の差が、900円÷12 = 75円
- AさんとBさんの収入連動部分(所得割)の差が、10,000 – 75 = 9,925円
AさんとBさんの所得と年収を逆算すると以下のようになります。
- Aさん:(35,000円 x 12 – 6,200円) ÷ 10.025%(横浜) = 約413万円 (推定年収 750万円)
- Bさん:(25,000円 x 12 – 5,300円) ÷ 10.000%(川崎) = 約295万円 (推定年収 580万円)
実際は、二人の住民税の差は、AさんのほうがBさんよりも年収が170万円高いからだね。と正しく解釈できます。
都心ほど住民税が高くなるのではなく、都心に住めるような高所得者ほど、住民税が高いのです。
また、住民税を披露する行為は、間接的に年収を暴露する行為になりますので、気をつけましょう。
引っ越しの翌年に住民税が増えたのが地域差と誤解
二人の間での誤解は、一人の場合でも発生することがあります。
「4月に入って昇進したので、住居もグレードアップして引っ越ししよう」
- 昇進すると年収も50万円ほど上がったりしますでしょうか。
- すると住民税は年収の約5%として、2.5万円上がりますね(月当たりは2,000円程度の上昇)。
- 住民税が反映されるのは翌年6月からとなります。
すると、翌年の住民税が上がったのを見て、引っ越しして住む場所を変えたら住民税が上がったと勘違いすることもあるでしょう。それにより、「地域によって住民税って違うんだな。」と誤った解釈をすることがあるかと思います。本当は、「年収が上がったから住民税も上がる」ということなのです。